「赤トンボが消えた」季刊のらのら郷童45

 童謡「赤とんぼ」の作詞者、三木露風の生誕地、兵庫県たつの市は「赤とんぼの里」と呼ばれてきましたが、その姿を見る機会が年々減ってきていると言います。この事実に危機感をおぼえた人々による保護活動の様子を、『のらのら 2015年冬号(No.17)』(農山漁村文化協会)と『教育新聞』(教育新聞社)の「円卓」に掲載されました。d0074731_2218283.jpg

 童謡「赤とんぼ」。あの歌を聴くと、子ども時代に見ていた景色が脳裏に浮かんでくる。童謡の多くが忘れられつつある今なお、根強い人気を誇る「赤とんぼ」。作詞は三木露風、作曲は山田耕筰。日本を代表する詩人と作曲家が手がけた名曲だ。露風は幼少期を過ごしたふるさと(現在の兵庫県たつの市)を思い出しながら、北海道でこの詩を書いたという。
全国的に赤とんぼが減少している今、その姿を求め、この歌を生んだ街「たつの」なら懐かしいあの光景に出合えるはず!と、シーズンが近づくにつれ、問い合わせが増えるという。しかしその期待に反し、たつの市でも赤とんぼは姿を消しつつあった。
JR姫新線・本竜野駅前には「童謡赤とんぼの像」が建っている。タクシーから市民ホール、宿に至るまで、さまざまなものに赤とんぼの名が付いている。そんな露風のふるさとから赤とんぼを消してはならないと立ち上がったのが、NPO法人「たつの・赤トンボを増やそう会」だ。その活動には子どもたちも関わっていた。
赤とんぼとは体の赤いとんぼの総称で、中でもその代表種の「アキアカネ」を目にする機会が激減している。原因は水田の減少と農薬使用にあるそうだ。そこで「たつの・赤トンボを増やそう会」では、農薬を控えたり、ヤゴを飼育して羽化させながら生態調査を続けたりと、専門家の指導のもと、様々な取り組みを行っていた。
どの街にも、その地を離れた人が懐かしく思い出す風景がある(…あった)はずだ。そんな地域の大切な財産を住民が認識し、意識的に守らない限り、めまぐるしく時代が移り変わる現代では、「気がついたときには手遅れだった」といった事態が今後ますます増えていくのではないだろうか。幸運にも露風のふるさとでは「アキアカネ」の数が増え始めているそうだ。
偉人を育み、名作を生んだ風景を後世に残すことは、今を生きる私たちの義務だ。日本人の遺伝子に組み込まれている日本的な風景は、たとえそれが昔話の絵本などでしか目にしたことがないものであっても、そこに身を置けば懐かしさを感じさせてくれるに違いない。あの幸せな気持ちを味わえる風景を残す取り組みは、自然保護にもつながっていた
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by sanaka-okamoto | 2016-01-03 22:19
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