教育新聞「円卓」コラム。農村と都会の子の交流。7月7日号

学校単位や親子、あるいは子どもだけで農村や漁村に出かけ、自然・労働体験をするイベントを、これまで何度か撮影した。定番中の定番である田植えや稲刈りのほか、畑作業、牛の乳搾り、地引網、郷土料理づくり、染め物など、多種多様なプログラムがある。
 子どもたちの体験を中心となって支援・指導するのは、地元のお年寄りの皆さん。経験豊かで時間にも余裕のある高齢者は、確かに適任だが、都会の子どもたちを出迎える一団もそうで、そこに地元の子どもの姿を見かけることはほとんどない。過疎化や少子化の影響だろうか、と不思議に思って「お孫さんは?」と尋ねてみると、「今の子はいろいろ忙しくてね。今日は町のほうでスポーツ大会があるとかで、親子揃って出かけちゃったよ」とおばあちゃん。私が子どものころは、都会から誰かが来ると聞けば興味津々だったけれど、今はもっと魅力的なものが彼らの周りにはたくさんあるのだろう。d0074731_1214633.jpg
 そんな中、秋田の山村体験には地元の子どもたちが積極的に参加していた。宿泊先は廃校。勝手知ったる野山に都会の子どもたちを連れ出し、一緒に駆け回る子。農作業はほとんど手伝わないとはいえ、さすがに段取りぐらいはわかるらしく、祖父母とともに講師役をつとめる子。子ども同士は仲良くなるのが早い。「うちに泊まりなよ」と誘われ、主催者に相談にやって来た子がいた。両家の家族が良ければと、無事外泊許可がおりて、その夜は新しい友達と枕を並べて寝たそうだ。翌朝は、宿泊先の農家の鶏小屋でタマゴを集め、朝霧の中、野菜の収穫も手伝ったという。体験の一部始終を嬉しそうに報告する子ども。「来年は一人で来てもらおうかしら」とお母さんもニコニコ顔だった。親戚のように家族と打ち解けた子どもが、毎年のように訪ねてくるケースが増えているという。
平成19年、政府による小学校の農山漁村長期宿泊体験活動を推進する「子ども農山漁村交流プロジェクト」が立ち上がった。そこに地元の子どもが参加しなくても、プログラム次第で満足感、成果は充分に得られるだろうが、異なる環境で暮らしている子ども同士が交流することで、この体験がより価値あるものになるような気がする。日本の未来を担うのは、彼らなのだから。
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by sanaka-okamoto | 2014-07-13 01:27
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